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本気! 番外編第三巻 SOS
≪あらすじ≫
――同じ標的へのいかりなら、いつも大人より少年のいかりの方が正しい。
まじめで物静かな中学生、御山俊行が体育教員の久保をカッターナイフで切りつけた。その件について、事情を知っていた華は、クラスメイトの君子を通じて、停学中の不良、青山良と友人の岩田純に相談する。
話によれば、御山は華に頼まれて、CDを貸すために夜中に会ったことが久保に見つかり、それを不純異性交遊として咎められた。その際、久保が華の母親がホステスであることをあげつらい「あんな女といるから色気づく」と侮辱したことに御山が怒り、カッターナイフで切りつけたらしい。御山が『キレた』理由は華の出自への侮辱であり、それゆえに華は御山を助け出したいと思い、良たちに相談したのだ。
それを聞いた良と純は学校から御山を連れ出す。御山はカッターナイフで久保を切りつけたことについて、潔く処罰を受けるつもりだと言うが、純たちは事の発端について疑問を投げかける。どうして夜中にクラスメイトと会ってはいけないのか、どうして異性と交際してはいけないのか。良も自分の受けた停学処分について疑問を持った。なぜ染髪はしてはいけないのか。
純たちは生徒会長の洋一に相談した。洋一は広く生徒たちに意見を募り、教員たちに校則の変更を求めようと提案する。
次第に賛同する生徒は集まり、それぞれが校則に対する不満を論じ合った。こうして、生徒たちは自らの要求を教師に飲ませるため、『闘争委員会』を結成する。
押し付けられたルールへの疑問、優劣をつけ競争をさせることへの懐疑、支配からの脱却と自由への渇望。これは自由のための闘いだ。
オススメ漫画紹介。評論って形式だと時間と頭を使う上、内容も重くなっちゃうので紹介ってことで。とにかく、この漫画を私は紹介したいのです。これはTwitterを始める直前に読んだ作品で、Twitterでも実は5年前に評論します。この漫画を評論した人、私しかいないのでは。
インターネットの発達により、漫画評論家などが論じないような漫画について、様々な感想や評論が目に触れる機会が増えた。漫画読者が自らの好きな漫画を自らの好きなように語る、この事象は大衆文化である漫画に相応しく、漫画好きの一人として大変喜ばしいことだと思う。
しかしながら、インターネットにはインターネットの傾向がある。2000年頃からインターネットが大衆化したとはいえ、やはりインターネットに気に入られづらい、語られ難い漫画という者は存在した。そういった漫画は、メジャーな漫画雑誌で長期間連載をしていても、ほとんど語られることがない。
週刊少年チャンピオン連載の『本気!』もそんな漫画のひとつである。連載10年、全50巻。長期連載、特に当時としては超大長期連載漫画の類である。この少女漫画調の絵柄のヤクザ漫画を、古本屋で見かけたことがある人は多いだろう。ブックオフ100円コーナーの常連である。
しかし、この漫画がインターネット上で論じられることはほとんどない。これには連載時期が1996年までであり、2chなどが勃興する以前に連載が終わってしまったことも関連するだろう。当然といえば当然だけど、2000年以降に連載されていた漫画は、そうでない漫画よりもインターネット上で語られる頻度が高く、ゆえにそれを見た人が更にその漫画を読み、比較的長くインターネット上で語られた。たとえば、2chの週刊少年チャンピオンスレッドでも、『本気!』は立原あゆみの代表作にもかかわらずほとんど語られないのに、同作家による週刊少年チャンピオン2004年連載の『Am a Boy』全二巻は連載当時からずっと「本官はゲイではない」や「出せやピッピ」といったセリフが高い頻度で引用されている。『本気!』はインターネットで語られる時機を逸した。
今回紹介するのは、その『本気!』の中でも、本編の連載終了後に掲載された番外編、その三巻のみである。こんなの誰も論じていない……。
いやね、これだけストレートに学生運動をテーマにした漫画はないですよ、本当に。山本直樹の『RED』とかはノンフィクションものだとか、そういうジャンルだし、学生運動を歴史から見る漫画、あるいはそれを下敷きというか、ダシにした漫画じゃないですか。カサハラテツローの『RIDEBACK』とか、アニメだと山田おろちの『まなびストレート!』とか、これらは学生運動をテーマにしていますけど、舞台は近未来SFだし、やっぱり変化球ではあるでしょ。
この漫画は主人公が中学生だし、まさに少年漫画。学生運動っていうと、大学ばかりが想起されるし、そこも含めていいよね、と。まあ、これも『学生運動漫画というより子供漫画』と言い得るかもしれないけど。
本当に、この漫画はただただ学生運動を描いています。ただただ学生運動です。管理教育に抗う中学生の物語です。大人の世界との関係に立ち向かう中学生による闘争の物語です。そして、自由と平等、民主主義と闘争を真正面から描いた漫画です。
この漫画、単行本一冊に纏まっていて、内容も本当に学生運動漫画として過不足ないんですよ。本当によく練られた作品です。さすがに週刊少年チャンピオンで50巻の長期連載を成し遂げただけあります。
ラストの捉え方は多元的だと思う。本当に素晴らしい。ヘラクレイトス的な『闘争』というものを見事に捉えた物語……だと思います。すごくね、大人のお為ごかしだな、と思う。他人を酌量するが故の妥協って甘さなのか、大人になることなのか、みたいな。闘争とは葛藤なんですよ。
私としては、最後に階級闘争で理想を掲げた多数派が少数派を虐げてしまう構造と、マイノリティの代弁者が権威である構造に……ああ、評論になるからやめよ。ネタバレもしない。これ、連載当時は1998年で、エヴァンゲリオンから2年、『キレる世代』の時代なんよね。
今ならkindleで買えるからすぐ読め。最高の漫画だから。読んだら感想を書け。ネットに。書きなぐれ。以上。PR -
毎日ブログ書いてる人って何なの? 超人なの? 暇なの? 今月は毎日更新しようと思ったけど、さすがに断念した。
いやね、ブログを書く暇そのものより、「ブログ書かなきゃなー」って圧迫感が仕事中に出てきたので、「あ、これは敢えて書くのを断念した方がいいな」と思って更新休んだわけ。さすがに仕事に支障を出すわけにはいかない。
それと、別所にいろいろ書いてるから、ブログに書くことが減ってるのかもしれない。実際、最近あんまりネット上の争いとか興味薄まってるわけで、日常の事はともかく、仕事やら社会活動の事なんか書かないようにしているし、書くことがないというか、書けることがないというか。毎日記事にするほどのことがない。別に書いてもいいんだけど、そういうブログにする気ないしさ。してみれば、毎日ブログを書いている人は暇なのではなく、書くことがある分充実しているのか。よくわからない。
列女伝、とりあえず訳そうと思っていた分は全部訳し終えたけど、内容が予想以上にアレでびっくりした。褒姒は『一笑傾国(一笑いしただけで国を傾けた)』なんて呼ばれているけど、本当に一笑しただけなので、とても国が亡びた責任を問うことはできないだろう。地位にある者としての責任を認めたとして、それなら幽王にはその億千倍しても足らぬ責任がある。
褒姒が望んだわけでもなんでもないのに、勝手に烽火を挙げて国を傾けたのは幽王じゃん。自分が望んで王と贅沢をした妲己とも違うよね、これ。なんで褒姒が悪女なんだよ、と訳していてだんだん腹が立ってきた。幽王が「好きな人を笑顔にするためなら国中の人を大混乱に陥れてもいい」みたいなサブカルクソ野郎だったのがすべての原因。サブカルクソ野郎を要職につけるな。
なにがムカつくって、妲己と紂王みたいに女が望んだことならわからんでもないけど、褒姒と幽王なんて完全に一方通行じゃん。サブカルクソ野郎は暴君以下の暗君。サブカルクソ野郎は勝手にあたたかい陽だまりの中で手を叩いてろ。猿みたいに。
褒姒は赤子の頃は山中で泣いてたんだから生まれつき感情がないのとは違うし、笑顔を失った所以を考えてみれば、彼女がハートに包帯を巻くことになった原因は人質として娶った幽王なんじゃねーの。勝手に全部ほどくな。アルエーエー。アルエって好きな曲でもなんでもないんだけど、歌いやすいからカラオケでつい歌っちゃうんだよな……。
褒姒はキャラクターとして面白いのだけど、どういう創作に使われているのかよく知らない。しかし、おそらくは90年代後半から爆発的な流行をした、いわゆる綾波系の元祖ということはわかる。ゆえに、サブカルクソ野郎にも大人気。でも、ルリルリと綾波ってジャンル違うよね……。90年代中盤から00年代中盤まで、「とりあえず少女が無口ならいい」と「とりあえず少女が包帯巻いておけばいい」みたいなノリはサブカルにもあったからな。そもそも、オタクはサブカルの一ジャンル。近年のオタクにあるキモい女性観や恋愛観って、サブカルからオタクに流れたものじゃないの? オタクがキモいのはその通りだけど、その源流であるサブカルこそキモいわ。どちらも死ね。
綾波系といえば、週刊少年チャンピオン連載のBMネクタール(2000~)というホラー漫画を思い出す。そのヒロイン『香ノ宮真里乃』は、第一部の小学校編では滅多に喋らない不思議系の女の子で綾波系と呼ばれていたのに、第二部の中学生編で活発なスポーツ少女になって読者をガッカリさせた。私は中学生編の香ノ宮の方が好きだったけど。
この漫画の作者は藤澤勇希という名前なんだけど、藤澤数希が登場したとき、私はこの二者を混同してしまい、「なにやってんの……」と思った。それはどうでもいいか。BMネクタールは面白いのでオススメ。実はサイン入りの単行本も私は持っている。
週刊少年チャンピオンはホラー漫画枠を設けてちゃんと載せてるのが好感度高い。BMネクタールの内容は「ゴミを食べて自己繁殖する夢の人工肉バイオミート(BM)が人間を食らいつくす」という内容で、第一部では小学校が襲われ、主人公の小学生4人以外は教師も児童も一人残らず食い殺される。BMは骨も残さず人間を食らいつくす。パニックアクションの要素が強いので、学校怪談とか不安の種みたいなホラーを期待すると違うかもしれないけど、エイリアンは文法がホラー映画だし、そういうジャンルの漫画だと思って手に取ってもらえれば。 -
関東大震災の朝鮮人虐殺についての書籍は、加藤直樹さんの『九月、東京の路上で』が有名だけど、意外なところでこの本の名を見て驚いた。
— サナギ (@sanagi3r4) September 1, 2019
山口貴由さんの漫画『衛府の七忍』6巻あとがき pic.twitter.com/vN5Zq39FQy
彼について、どんなに右翼的な漫画を描いたとしても、どんなに反人権思想的な漫画を描いたとしても、この一線だけは踏み越えない人だと私はずっと言ってきたけれど、ほんとうの彼は、この道の一番ド真ん中を堂々と踏み歩いていた。それを私は知っていたはずなのに、そう表現できなかった己の言葉と志の弱さを恥じる。
いろいろと思うことはあるけれど、この人の漫画が好きでよかったと思う。やっぱアンタが私の中ではチャンピオンだ。