"孝経"カテゴリーの記事一覧
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10.紀孝行
子曰、孝子之事親也、居則致其敬、養則致其樂、病則致其憂、喪則致其哀、祭則致其嚴。
子曰く、孝子の親に事うるや、居りては則ち其の敬を致し、養いては則ち其の樂を致し、病みては則ち其の憂いを致し、喪いては則ち其の哀を致し、祭りては則ち其の嚴を致す。
五者備矣、然後能事親。事親者、居上不驕、為下不亂、在醜不爭。居上而驕則亡、為下而亂則刑、在醜而爭則兵。
五者の備わるや、然る後に能く親に事うる。親に事うる者、上に居りても驕らず、下に為りても亂れず、醜に在りても爭わず。
居上而驕則亡、為下而亂則刑、在醜而爭則兵。三者不除、雖日用三牲之養、猶為不孝也。
上に居りて而して驕れば則ち亡、下を為して而して亂るは則ち刑、醜に在りて而して爭えば則ち兵。三者除かざれば、日に三牲の養を用いると雖も、猶不孝を為すなり。
11.五刑
子曰、五刑之屬三千、而罪莫大於不孝。
子曰く、五刑の屬は三千、而して罪に於けるや不孝より大なるもの莫し。
要君者無上、非聖人者無法、非孝者無親。此大亂之道也。
君を要める者に上は無く、聖人を非る者に法は無く、孝を非る者に親は無し。此れ大亂の道なり。
12.廣要道
子曰、教民親愛、莫善於孝。教民禮順、莫善於悌。移風易俗、莫善於樂。安上治民、莫善於禮。
子曰く、民に親愛を教えるに、孝より善なるもの莫し。民に禮順を教えるに、悌より善なるもの莫し。風を移して俗を易えるに、樂より善なるもの莫し。上を安んじ民を治めるに、禮より善なるもの莫し。
禮者、敬而已矣。故敬其父、則子悅、敬其兄、則弟悅、敬其君、則臣悅、敬一人、而千萬人悅。
禮は、敬するのみ。故に其の父を敬して、則ち子は悅び、其の兄を敬して、則ち弟は悅び、其の君を敬して、則ち臣は悅び、一人を敬して、而るに千萬人悅ぶ。
所敬者寡、而悅者眾、此之謂要道也。
敬す所の者は寡く、而して悅ぶ者は眾、此の之ぞ要道の謂いなり。
13.廣至德
子曰、君子之教以孝也、非家至而日見之也。
子曰く、君子孝を以て教うるや、家に至り而して日に之を見るに非ざるなり。
教以孝、所以敬天下之為人父者也。教以悌、所以敬天下之為人兄者也。教以臣、所以敬天下之為人君者也。
孝を以て教うれば、天下之れを人父の者と為して敬する所以なり。悌を以て教うれば、天下之れを人兄の者と為して敬する所以なり。臣を以て教うれば、天下之れを人君の者と為して敬する所以なり。
詩云、愷悌君子、民之父母。
詩に云く、愷悌に君子、民の父母たり、と。
非至德、其孰能順民如此其大者乎。
至德に非らざれば、其の孰をか能く民を順えるに此くの如く其の大なる者あらんや。
14.廣揚名
子曰、君子之事親孝、故忠可移於君。事兄悌、故順可移於長。居家理、故治可移於官。
子曰く、君子の親に事うるは孝、故に忠は君に移る可し。兄に事うるは悌、故に順は長に移る可し。家に居りては理、故に治は官に移る可し。
是以行成於內、而名立於後世矣。
是れ以て行は内に成し、而して名は後世に立てんか。
15.諫諍
曾子曰、若夫慈愛、恭敬、安親、揚名、則聞命矣。敢問子從父之令、可謂孝乎。
曾子曰く、若し夫の慈愛、恭敬、安親、揚名、則ち命を聞かん。敢えて問うが子の父の令に從うは、孝と謂う可きか。
子曰、是何言與、是何言與。昔者天子有爭臣七人、雖無道、不失其天下、
子曰く、是れ何を言うか、是れ何を言うか。昔の天子は爭臣七人有り、無道と雖も、其の天下を失わず、
諸侯有爭臣五人、雖無道、不失其國、
諸侯に爭臣五人有り、無道と雖も、其の國を失わず、
大夫有爭臣三人、雖無道、不失其家、
大夫に爭臣三人有り、無道と雖も、其の家を失わず、
士有爭友、則身不離於令名、父有爭子、則身不陷於不義。
士に爭友有れども、則ち令名に身を離さず、父に爭子有れども、則ち不義に身を陷ず。
故當不義、則子不可以不爭於父、臣不可以不爭於君、故當不義、則爭之。
故に不義に當たりて、則ち子は以て父と爭わざる可からず、臣は以て君と爭わざる可からず、故に當に不義、則ち之れ爭。
從父之令、又焉得為孝乎。
父の令に從うは、又焉んぞ孝を為すと得るか。
16.感應
子曰、昔者明王事父孝、故事天明、事母孝、故事地察、長幼順、故上下治。
子曰く、昔明王父に事えて孝、故に天に事えて明、母に事えて孝、故に地に事えて察、長幼に順い、故に上下は治まる。
天地明察、神明彰矣。故雖天子、必有尊也、言有父也、必有先也、言有兄也。
天地明察にして、神明を彰す。故に天子と雖も、必や尊有るや、父有るを言うや、必や先有るや、兄有るを言うなり。
宗廟致敬、不忘親也、修身慎行、恐辱先也。宗廟致敬、鬼神著矣。
宗廟に敬を致し、親を忘れずや、身を修めて慎みて行い、先に辱を怖れるなり。宗廟に敬を致し、鬼神を著さんか。
孝悌之至、通於神明、光於四海、無所不通。
孝悌の至、神明に通じ、四海を光らし、通らざる所無し。
詩云、自西自東、自南自北、無思不服。
詩に云う、西によりて東によりて、南によりて北によりて、思うて服せざる無し。
17.事君
子曰、君子之事上也、進思盡忠、退思補過、將順其美、匡救其惡、故上下能相親也。
子曰く、君子の上に事えるや、進みては忠を盡くさんと思い、退きては過を補わんと思う、其の美に將順い、其の惡を匡救し、故に上下に能く相親むなり。
詩云、心乎愛矣、遐不謂矣、中心藏之、何日忘之。
詩に云く、心愛さんか、遐ぞ謂わんか、中心之れを藏し、何日之れを忘れん。
18.喪親
子曰、孝子之喪親也、哭不偯、禮無容、言不文、服美不安、聞樂不樂、食旨不甘、此哀戚之情也。
子曰く、孝子の親を喪うや、哭して偯ず、禮ありて容無く、言いて文らず、美に服して安んぜず、樂を聞き手も樂しまず、旨を食いて甘からず、此れ哀戚の情なり。
三日而食、教民無以死傷生。毀不滅性、此聖人之政也。喪不過三年、示民有終也。
三日而して食、民に教えて以て死傷生無し。毀して性を滅さずは、此れ聖人の政なり。喪三年過ぎず、終り有るを民に示すなり。
為之棺槨衣衾而舉之、陳其簠簋而哀戚之、擗踴哭泣、哀以送之、卜其宅兆、而安措之、為之宗廟、以鬼享之、春秋祭祀、以時思之。
棺槨衣衾之れを為し、而して之れを舉げ、其の簠簋を陳べて而して之れを哀戚し、擗踴哭泣し、哀を以て之れを送り、其の宅兆を卜い、而して之れを安措し、之れを宗廟と為し、以て鬼之れを享し、春秋祭祀、以て時に之を思う。
生事愛敬、死事哀戚、生民之本盡矣、死生之義備矣、孝子之事親終矣。
生に事えては愛敬し、死に事えては哀戚し、生民の本を盡さんか、死生の義を備えんか、孝子の親に事うるを終わらんか。
以上、全十八章が孝経である。
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書き下し文の練習として、孝経を用いたので、その成果をここに貼っつけとく。
あまり質のいいものではないと思うけど、誰かがなにかの参考にできるなら嬉しい。
儒教教学において重大な孝の概念を、どのようにかつての人が捉えていたか、その基盤を知ることには、意味があるように思う。たぶんだけど。
1.開宗明義
仲尼居、曾子侍。
仲尼居して、曾子侍す。
子曰、先王有至德要道、以順天下、民用和睦、上下無怨、汝知之乎。
子曰く、先王に至德の要道有りて、以て天下を順え、民は用いて和睦し、上下に怨みなし。汝、之れを知るか。
曾子避席曰、參不敏、何足以知之。
曾子、席を避けて曰く、參は不敏なるに、何を以て之れを知ると足るや。
子曰、夫孝、德之本也、教之所由生也。復坐。吾語汝。
子曰く、夫れ孝、德の本なりて、教の由りて生ずる所なり。復り坐れ。吾、汝に語らん。
身體髮膚、受之父母、不敢毀傷、孝之始也。立身行道、揚名於後世、以顯父母、孝之終也。
身體髮膚、之れ父母に受け、敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。立身行道、名を後世に揚げて、以て父母を顯すは、孝の終わりなり。
夫孝、始於事親、中於事君、終於立身。
夫れ孝、始めに於いては親に事え、中に於いては君に事え、終わりに於いては身を立てる。
大雅云、無念爾祖、聿脩厥德。
大雅に云う、爾の祖を念うこと無し。厥の德を聿べ脩む、と。
2.天子
子曰、愛親者、不敢惡於人、敬親者、不敢慢於人。愛敬盡於事親、而德教加於百姓、刑於四海。蓋天子之孝也。
子曰く、親を愛する者、敢えて人を惡まず、親を敬う者、敢えて人に慢らず。親に事うるに愛敬を盡くし、德を百姓に教加し、四海に刑す。蓋し、天子の孝なり。
甫刑云、一人有慶、兆民賴之。
甫刑に云う、一人に慶有りて、兆民之れを賴る、と。
3.諸侯
在上不驕、高而不危、制節謹度、滿而不溢。
上に在りて驕らざれば、高にして危うからず。制節謹度、滿ちて溢れず。
高而不危、所以長守貴也。滿而不溢、所以長守富也。
高にして危からざるは、長く貴を守る所以なり。滿ちて溢れずは、長く富を守る所以なり。
富貴不離其身、然後能保其社稷、而和其民人。蓋諸侯之孝也。
富貴を其の身から離さざれば、然る後に其の社稷を保つに能い、而して其の民人を和す。蓋し諸侯の孝なり。
詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。
詩に云く、戰戰兢兢として、深き淵に臨むが如く、薄冰を履むが如し、と。
4.卿大夫
非先王之法服不敢服、非先王之法言不敢道、非先王之德行不敢行。
先王の法服に非るは敢えて服さず、先王の法言に非るは敢えて道わず、先王之德行に非るは敢えて行わず。
是故非法不言、非道不行、口無擇言、身無擇行。
是れ故に法に非ずば言わず、道に非ずは行わず、口に言擇無く、身に行擇無し。
言滿天下無口過、行滿天下無怨惡。三者備矣、然後能守其宗廟。蓋卿、大夫之孝也。
言は天下に滿ちて口過無く、行は天下に滿ちて怨惡無し。三者備われば、然る後に其の宗廟を守るに能う。蓋し卿、大夫の孝なり。
詩云、夙夜匪懈、以事一人。
詩に云う、夙夜懈らず、以て一人に事える、と。
5.士
資於事父以事母、而愛同、資於事父以事君、而敬同。
父に事えるに資するを以て母に事え、而して同じく愛し、父に事えるに資するを以て君に事え、而して同じく敬す。
故母取其愛、而君取其敬、兼之者父也。故以孝事君則忠、以敬事長則順。
故に母は其の愛を取り、而して君は其の敬を取り、之れを兼ねる者は父なり。故に以て孝は君に事えるを則ち忠、以て敬は長に事えるを則ち順なり。
忠順不失、以事其上、然後能保其祿位、而守其祭祀。蓋士之孝也。
忠順失わず、以て其の上に事え、然る後に其の祿位を保つに能い、而して其の祭祀を守る。蓋し士の孝なり。
詩云、夙興夜寐、無忝爾所生。
詩に云う、夙に興き夜に寐て、爾の所生を忝むる無かれ、と。
6.庶人
用天之道、分地之利、謹身節用、以養父母、此庶人之孝也。
天の道を用いるに、地の利を分け、身を謹みて用を節し、以て父母を養う、此れ庶人の孝なり。
故自天子至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。
故に天子より庶人に至るまで、孝に終始無く、而して及ばざる者を患い、未だ之有らざるなり。
7.三才
曾子曰、甚哉、孝之大也。
曾子曰く、甚しき哉、孝の大なるや。
子曰、夫孝、天之經也、地之義也、民之行也。
子曰く、夫れ孝、天の經なり、地の義なり、民の行なり。
天地之經、而民是則之。則天之明、因地之利、以順天下。是以其教不肅而成、其政不嚴而治。
天地の經、而して民是之れに則る。天の明に則り、地の利に因み、以て天下を順える。是れを以て其の教を肅ならず而して成り、其の政を嚴ならず而して治む。
先王見教之可以化民也、是故先之以博愛、而民莫遺其親、陳之以德義、而民興行。
先王の教え之を以て民を化するべきを見るなり、是れ故に之の先に博愛を以て、而して民其の親を遺うこと莫く、之れを陳べるに德義を以て、而して民は興り行く。
先之以敬讓、而民不爭、導之以禮樂、而民和睦、示之以好惡、而民知禁。
之の先に敬讓を以て、而して民爭わず、之を導くに禮樂を以て、而して民は和睦し、之を示すに好惡を以て、而して民は禁を知る。
詩云、赫赫師尹、民具爾瞻。
詩に云う、赫赫たる師尹、民と具に爾を瞻る、と。
8.孝治
子曰、昔者明王之以孝治天下也、不敢遺小國之臣、而況於公、侯、伯、子、男乎。
子曰く、昔明王の孝を以て天下を治むるや、敢えて小國の臣を遺れず、而るに況んや公、侯、伯、子、男に於いてをや。
故得萬國之歡心、以事其先王。治國者、不敢侮於鰥寡、而況於士民乎。
故に萬國の歡心を得て、以て其の先王に事う。國を治む者、敢えて鰥寡を侮らず、而るに況んや士民に於いてをや。
故得百姓之歡心、以事其先君。治家者、不敢失於臣妾、而況於妻子乎。
故に百姓の歡心を得て、以て其の先君に事う。家を治む者、敢えて臣妾を失わず、而るに況んや妻子に於いてをや。
故得人之歡心、以事其親。夫然、故生則親安之、祭則鬼享之。是以天下和平、災害不生、禍亂不作。
故に人の歡心を得、以て其の親に事う。夫れ然るに、故に生に則り親を之れ安んじ、祭に則り鬼を之れ享く。
是以天下和平、災害不生、禍亂不作。故明王之以孝治天下也如此。
是れ以て天下を和平し、災害生じず、禍亂作らず。故に明王の孝を以て天下を治むるや此の如くなり。
詩云、有覺德行、四國順之。
詩に云く、有覺の德行、四國之に順う、と。
9.聖治
曾子曰、敢問聖人之德、無以加於孝乎。
曾子曰く、敢えて問う。聖人の德、以て孝に加うる無きか。
子曰、天地之性、人為貴、人之行、莫大於孝。孝莫大於嚴父。嚴父莫大於配天、則周公其人也。
子曰く、天地の性、人を貴と為し、人の行、孝より大なるもの莫し。孝は父を嚴するより大なるもの莫し。父を嚴するは天に配るより大は莫く、則ち周公其の人なり。
昔者、周公郊祀后稷以配天、宗祀文王於明堂、以配上帝。是以四海之內、各以其職來祭。
昔、周公は后稷の郊祀を以て天に配し、明堂に文王を宗祀して、以て上帝を配す。是れを以て四海の內、各其職を以て來祭す。
夫聖人之德、又何以加於孝乎。
夫れ聖人の德、又何ぞ以て孝に加えんか。
故親生之膝下、以養父母日嚴。聖人因嚴以教敬、因親以教愛。聖人之教、不肅而成、其政不嚴而治、其所因者本也。
故に親之を膝下に生じて、以て父母を養い日に嚴ず。聖人嚴に因りて以て敬を教え、親に因りて以て愛を教える。聖人の教、肅ならず而して成り、其の政嚴ならず而して治め、其の因る所の者は本なり。
父子之道、天性也、君臣之義也。父母生之、續莫大焉。君親臨之、厚莫重焉。
父子の道、天性なり、君臣の義なり。父母の生之れ、續くこと焉れより大は莫し。君親之に臨みて、厚きこと焉れより重は莫し。
故不愛其親而愛他人者、謂之悖德、不敬其親而敬他人者、謂之悖禮。
故に其の親を愛さず而して他人を愛する者、之れを悖德と謂い、其の親を敬さず而して他人を敬する者、之れを悖禮と謂う。
以順則逆、民無則焉。不在於善、而皆在於凶德、雖得之、君子不貴也。
以て順則逆にして、民は則ること無し。善在らずして、而して皆凶德在れば、之を得ると雖も、君子貴からざるなり。
君子則不然、言思可道、行思可樂、德義可尊、作事可法、容止可觀、進退可度、以臨其民。
君子は則ち不然、言は道うべきを思い、行は樂しむべきを思い、德義尊ぶべし、作事法るべし、容止觀るべし、進退度るべし、以て其の民に臨む。
是以其民畏而愛之、則而象之。故能成其德教、而行其政令。
是れを以て其の民を畏れ而して之を愛し、則ち而して之れを象る。故に其の德教を成るに能い、而るに其の政令を行う。
詩云、淑人君子、其儀不忒。
詩に云う、淑人君子、其の儀は忒わず、と。