日本神話においても月の神は存在する。その名は
月読命 。昼の世界、夜の世界、地上世界の三つの世界を統括する貴い神として、昼の世界を司る
天照大御神 と地上世界を司る
須佐之男命 と共に日本列島を創造した
伊邪那岐命 の子として生まれ、『三貴子』と称された。そのことは、現存する日本最古の歴史書とされる古事記と日本書紀の両方に記されたことである。
古事記と日本書紀は、最初に神代と呼ばれる神話の時代から物語が始まる。それから神々と人間の交雑する神武天皇の物語を経て、欠史八代という空白期間の後、十代崇神天皇の時代となってから、人間を主とした歴史に舞台が遷るのだ。これらの書物の特徴は、神話と歴史が連続していることである。
古事記と日本書紀は、最初に神代と呼ばれる神話の時代から物語が始まる。それから神々と人間の交雑する神武天皇の物語を経て、欠史八代という空白期間の後、十代崇神天皇の時代となってから、人間を主とした歴史に舞台が遷るのだ。これらの書物の特徴は、神話と歴史が連続していることである。
では、古事記の神話では、この三者がどのように描かれているのだろうか。
まず、須佐之男命 は天界で暴虐の限りを尽くし、一度は天照大御神 を天の岩戸と呼ばれる洞窟の中に押し込んでしまう。こうして天界から追放された後、須佐之男命 は怪物の生贄にされようとしている一人の少女を救うため、その怪物と戦って勝利し、出雲の王となる。須佐之男命 は、一種のダーティー・ヒーローとして神話の時代の前半における主人公として活躍し、その子孫の大国主 も須佐之男命 を継ぐ神話の主人公として日本全土を統治した最初の王として描かれる。
これに対して、天照大御神 はどうか。天界の神々の手によって岩戸から復活した天照大御神 は、天界の軍勢を地上に差し向け、大国主 に対して日本列島を譲るように迫り、自らの孫の瓊瓊杵尊 を日本列島の支配者に据える。この瓊瓊杵尊 こそ、大国主 の次の日本神話の主人公となり、その子孫が後の天皇であったと描かれ、そこから日本は神話の時代を終え、人間の歴史の時代に遷る。
つまり、天照大御神 と須佐之男命 は、日本における神々の時代の二大主人公の系譜なのである。この両者の対立と融合の関係こそが、古事記における神話のキモとなる。
では、古事記の神話において、月読命 はどのように描かれているのか。
なんと、誕生時以外には一切登場しない。須佐之男命 と天照大御神 という二大主人公の兄弟でありながら、活躍が見られないどころか、何のエピソードもないのである。これはどういうことだろうか。
次回は、古事記の神話時代における月読命 の記録について改めて検討しよう。
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