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塗説録

愁いを天上に寄せ、憂いを地下に埋めん。

コロナウイルスはグローバリズムのとどめにならないどころか、このままだと更にグローバリズムを加速させる。
 どうやらコロナウイルスでグローバリズムが終わるとか、そういう話が随分と多方面で出回っているらしい。曰く、「人の移動が忌避されるので、グローバリズムは終焉に向かう」とのこと。うーん、「コロナウイルスをきっかけとしてグローバリズムが終焉に向かう」という大枠の話であれば、その可能性がないとは思わないけど、その理路には賛同し難い。巷の話を聞いていると、どうにも楽観論が過ぎるんじゃなだろうか。
 何の手立てもなく、ただ漫然とコロナウイルスに対して目の前の対策をしつつ、即物的な態度で状況に適応していけば、むしろグローバリズムは加速すると私は思う。コロナウイルスで「これでグローバリズムは終わりだ。わっほいわっほい」と浮かれている人たち、浮足立っていると思うよ。

 これは今後の予想なんだけど……。

 いやね、今回の件でよく「仕事をせずに引きこもっていられるのは金持ちだけだ。休業補償をしないと貧困者は死ぬ。外に出させたくないなら仕事が休めるように休業補償をしろ」という話がよく出ているし、それ自体は正しいのだけど、これって大企業と中小零細企業にもまったく同じように当てはまるわけで。
 グローバルな巨大企業こそ、金はあるし、適当に下請け企業を切断してコストカットして、それでのうのうと生きていけるし、逆に中小零細企業こそコロナによる客の減少、下請け孫請けとしての仕事を切られ、経営が回らなくなり、更には突然緊急事態宣言だの、ロックダウンをするかもしれないだので休業まで求められ、そんな状況でどんどん倒産、事業閉鎖をしていくだろう。

 外出が減り、経済が停滞し、買い控えが起こって吹き飛ぶのは、イオンやamazonではなく、商店街の魚屋や書店だろう。どう考えても真っ先に死ぬのは中小零細企業や昔ながらの商店であり、生き残るのは全国チェーンや多国籍企業だ。コロナウイルスが流行ってamazonやGoogleが潰れるか? むしろ利用者は増えるだろう。
 ライブハウスなんかが潰れるかも、って話があるけど、あれこそグローバリズムと逆の存在たる地場産業であってね。地縁で普段回していたりする産業なので、それがyoutubeなどでのネット中継に変わるとかなんとか、そんな話があるけど、それって完全にグローバリズムに乗っかっているわけで。youtubeなんて世界企業でしょ……。全然ローカリズムじゃなくなっている。そもそも、映像だとライブの意味がほとんど失われるし、全然人気なくなるだろうな……。ベースなんて、あれは耳じゃなく肚で聴くものだよ。
 こうした話は、「コロナによって加速したグローバリズムの波にのまれて、ローカリズムでしか存在できない事業が消え去った」と、このように纏めることしかできない。地方にある昔ながらの古書店とブックオフ、コロナウイルスによって不利になるのは、どちらだと思う? ブックオフとamazonどちらが不利だと思う?
 これで本当にグローバリズムがコロナウイルスで止まるのだろうか。どう考えても、このままだとグローバリズムが加速する未来しか見えない。


「Amazon Go」はなにが凄いのか…「詳しい人」の意外な答え @moneygendai
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59491 #マネー現代


 スーパーやコンビニでも、こういう店舗が求められるような気もする。無人店舗。
 こういう店舗を用意できるのはどういう企業か。当然ながらグローバルな巨大企業だよね。で、更には雇用も減る、と。かくして二極化はさらに進行する。そういえば、コロナに関する補償でベーシックインカムの話が出ているけど、これだって新自由主義的な政策だよね。「無能は生きていけるだけの金を渡しておくからそれで勝手に生きろ」という。私自身はコロナ対策としてのベーシックインカムというのはひとつの案としてアリだと思うけど、これが新自由主義を加速させる効果を持つことは問題として同時に存在する。

 私は普段、大企業の役員、大企業の社員、中小零細企業の役員、中小零細企業の社員、自営業者などなど……あらゆる職種の人たちに会う機会が多いため、リモートワークができている企業、できていない企業、できている雇用形態、できていない雇用形態、これほど明暗が分かれているものもないと知っている。最先端技術をフルに設備として使用できる、そうした企業でも優遇されている存在、自宅でもできるデスクワーク中心、すなわち大企業の正社員、特に管理職はリモートワークを利用できているし、逆に設備がなかったり、設備の利用を後回しにされていたり、そもそもリモートワークできない現場作業を行う、中小零細企業の社員やパート、派遣社員などはリモートワークをできない、させてもらえない。
 あったりまえの話だよなあ。どう考えても資本家有利、大企業有利だ。これを単純に金がないから設備が使えないという格差の問題として捉えるのもいいけど、もっと根が深い部分がある。これはつまり、「金持ちは外出、移動をしなくても金持ちのままで、エリートたちもそれを最小限に減らすことができるが、貧困者は仕事の性質からしてそれができない」ということでもある。金持ちは移動しなくても金持ちのまま、ということは、「コロナによって人の移動が忌避され、グローバリズムが終息する」という主張の論拠が根底から崩されることになる。大資本家の仕事は大半が移動しなくてもできる仕事なのだよ。よくある意見、「外出しなくて済むのは金持ちだけ。貧困者は働かないと生きていけない」というのはその通りなのだけど、これって「コロナウイルスによる移動の忌避は貧困者にとってこそ害である(貧困者は元の生活の方がマシ)」ということの証明だしね。
 もしかしたら、コロナに騒動よってキャッシュレス、電子マネーが加速度的に使われるようになるかもしれない。これって金銭が電子システムを介さないと使えなくなるってことでしょ? 古い業界は飛ぶし、どんどん金がインターネットを介してグローバルなシステムに回収されていっているじゃん。


 今後空家や空地は地方に増えるし、コロナウイルスによってそれを目指した人が地方に分散する機運が起こることが一切ないとまでは思っていないし、確かに私も「外国人実習生制度の穴埋めをするべく、これからは小作人が流行る!」と色々な場で言っているのだけど、それで産業構造が一気に「これからは自給自足の時代! 小さな共同体ですべてを生産消費!」とまで変化するかどうかというと……。革命でも起こして政府がそれを推進しない限り、そうはならないだろう。人民公社つくるとか?
 そういったよほどの人為的な変革でもない限り、単純に漫然とコロナウイルスに対応している中で自然とグローバリズムがコロナウイルスによって抑制されることはないと思う。むしろグローバリズムも二極化も進むんじゃないかなあ……。コロナウイルスで地方の商店街とか書店とか消えるよ、ほんと。このままだと、ローカルなものが駆逐される。政府を機能停止にして革命を起こしたのち、巨大企業にしっかりとどめを刺すとか、それくらいしないとこの流れは加速するよ。

 まず大前提を再確認したいのだけど、グローバリズムの問題点って「人が移動すること」よりも「人が移動できないこと」だよね。コロナによって人の移動が忌避されてグローバリズムが終焉すると主張する人たちは、現在が移民を奴隷扱いして国内に植民地をつくることがグローバリズムの問題となっているから、人の移動が制限されることでグローバリズムが終焉すると単純に思っているみたいだけど、そもそもその認識がおかしいんだよ。確かにコロナ騒動で外国人実習制度などは潰れたみたいだけど、グローバリズムはそれだけでは止まらない。
 移民や外資系企業による新自由主義以前だって、かつては先進国が国外に工場をつくって現地人を使役する経済植民地化をしていたわけだし、更にその前は先進国が他国を占領する植民地帝国主義が繰り広げられ、そういう形で一種の「グローバリズム」は展開していた。これって現地人は国境を移動していないし、そもそもできないじゃん。それに、植民地を搾取をしていい暮らしをしていた宗主国の富裕層や大企業の役員たちだって、植民地の労働者より自由に国境を移動することはできるけど、かといってほとんどの人は国境を超えるなんて日常的なことではなかった。国境を越えて移動をしているのは資本だ。帝国主義や経済植民地の時代に「グローバリズム」を実現していたのは、資本の移動だよ。

 これは今だってそうだ。富裕層は国から国に自由な移動ができるけど、貧困層は国から国に自由な移動ができない。そして、富裕層だって国から国に移動することなんてほとんどの人には日常的なことではなく、自宅のデスクに座ったままで仕事なんていくらでもできる。人の移動はグローバリズムの問題点の本質ではない。資本の移動こそがグローバリズムの本質だ。
 資本こそが国境を容易く超える。だから資本は恐ろしい。それこそがマルクス以降の共産主義思想における世界同時革命の必要性だったんじゃないの? 資本主義において容易に国家を超えるのは人じゃなくて資本なの。だから問題なの。貧困層まで含めて人の移動が自由にできるだけの構造が存在すれば、グローバリズムはここまで問題とはなっていない。数年前にパナマ文書騒動があったけど、ああいったタックスヘイブンをなぜ世界中の金持ちが使えると思う? 金持ちがパナマに自由に引っ越せるからだろうか。違う。金は情報であり、移動が容易だからだ。金持ちは自分の国に住みながら、財産は海外に逃がしている。これこそがグローバリズムの、そして資本主義の脅威ではないか。

 海外旅行ごときはグローバリズムの象徴でもなんでもない。コロナウイルスによっては、庶民がお金を貯めてエコノミークラスの旅客機でささやかな海外旅行を楽しむことと、個人用ジェット機で金持ちが旅行すること、どちらが真っ先に禁じられるであろうか。こうして考えれば、コロナウイルスで格差がなくなるとか、人の移動が忌避されてグローバリズムがとどめを刺されるなど、甚だ危うい意見である。コロナウイルスの流行で多少人の移動が忌避されたり制限されたところで、ますます貧困者は移動が困難になるばかりで、資本は国境を容易く超える。

 肉体を持つ人は土地に縛り付けられながら、「金」という情報は身軽に世界を飛び交う。コロナウイルスとそれに伴った社会環境の変化により、世界的に人自身が移動を控え始め、情報ばかりが世界中を駆け回る情勢は、反グローバリズムでもなんでもなく、むしろグローバリズムの完成に向かっているだけではないか。そう思えてならない。
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コメント

1. 福祉にタダ乗りしてるのは誰なのか

そもそも、パンデミックまでの時間稼ぎが全然できない環境を作り出してるのが、グローバル化。これまでは新しいウィルスが発生したら、どこ大陸のどこ、が重要だったけど、これからは、新しいウィルスが発生した=世界中で流行、と思った方が良いぐらいです。
グローバル経済旗振り役だった欧米が、新型感染症にまったく脆弱だったということで、大金持ちがシンガポールあたりに逃げるのが目に見える。
そういえば、金持大好き香港も、政治は別にして、福祉がいいんですよね。

それか、Googleあたりが、防疫を盾にドン引くような個人情報のぶっこぬきを始めるか。

しかし、シンガポールが、新自由主義者の言う、自由な資本主義国かと、いわれれば明らかに違う。あの国が良いか悪いかは別にして、国民の多くが四万円台の公団みたいなのに暮らしてる国です。当然、そんななんで、福祉制度もそれなりです。

それに、こーなったら共産主義国の中国の巨大生産能力が経済の立て直しの鍵になります。なにより、マスクをはじめとした医療品も中国頼み。ついでに、マスクの値段があまり、変わっていないのは、中国は、物価統制をするシステムがあるからで、それが、世界的な仕入れ値に影響するからです。

グローバル資本家って、グローバルに福祉のタダ乗りをしてるなぁ。

防疫と人権には中々のっぴきならない関係があり、どこの国でも、あんまり変えたくない分野のはず。こんなことが何回も続くとなかなか厳しい。都市封鎖なんて何度もやりたい国は無いはず。
防疫が出来てる国は、だいたいが内戦か、政変を体験してる国ばかりなんで、好き好んでそうなわけではないわけで、、、

2. 山本太郎批判とパンデミック

以前、山本太郎はファシズム的ではないか、という記事を改めて読みましたが、
私がこのパンデミックで気になっているのは、むしろ、パンデミック以後の政治状況だったりします。アビガンなる薬は案外効
くと思いましすし、PCR検査より確実な検査方法が実用化されつつあります、おそらく、ドライブスルー検疫もそろそろ始まると思います。
中国だと無症状者も統計に入れました。もうそろそろ韓国もそうなると思います。

しかし、生産の大幅な減少と、ばら撒き政策がセットになり、インフレが起き、世界中でファシズム的な動きが出できたら嫌だなーと。
中国が株が下がっても緊急に、大量資金投入しないのは、今回ばかりは事情が違うからでしょう。
お金は 人には 必要ですが、、、、

いま、金融関係にがばがば金を入れ始めたら、ヤバイ。山本太郎以上、と、いうか自覚的な本物が世界中に登場する。

なんやら、自粛するな、検査するな、金ばらまけ、的な意見の人の多くが、半緊縮派なのも気になるところです。しかも、そういう人たちって未だに韓国方式の批判してるし。

3. 無題

冷静で的確な意見。
さすが倭人さん

4. 無題

そういえば金融危機の時に、感染リスクを低減するために金融ネットワークの自粛が要請されるとか封鎖されるといった話はあまり聞こえてきませんね。
https://twitter.com/TrinityNYC/status/1248688770498560002?s=19

5. 無題

> 猫柳さん

 なんとなく、今後「グローバリズムは加速するけど、全体主義も求められる」ように感じます。国家単位の新自由主義、とでもいうべきか。うまく言えませんが。そういう流れがひとつ間違いなく出来上がるな、と。
 グローバル資本家って実は警察に乗っかった存在でしかないんですよね。通貨だって国家に依存しているし。
 ネオリベ→リフレ派→反緊縮の流れがすごく胡散臭い。なんの反省もないのが間違いないから。山本太郎はその点、やはり危うい存在だと感じます。

> さん

 人質を助けるために牧師に変装するくらいお手の物です。

> 安藤さん

 他の人が苦しむ中、金貸しは儲け続けるんですよね、疫病の時は。国際金融なんてまさに典型。
 ここはやはり徳政令が必要です。
 うまくいけば人民の生活は守られ、うまくいかなければ討幕すればよろしい。
 借金帳消しと同時に、家賃、いくつかの税も全部支払いを免除。これ。

6. Amazon以上にグーグルとかのほうがアレ

何故か、ラインのアンケートが、検査以上に患者の把握に使用されているわけで。
このままだと、アップルとグーグルに生活の全てが把握される毎日を送ることになるんでしょうね。政治は信用できないけど、企業は信用できるって、そういう人も多いですし。
韓国中国と違って、自前のIT産業を持たない日本では、外国企業が外国のサーバーで色々やられると、法的な抑えが効かなくなる可能性も、、、。技術力のあるナシで、見えない植民地になる感じ。
政府の横暴より、企業による植民地化のほうが、これから、重大な人権侵害を生み出し、国際的な枠組みなしでは解決できなくなるかと。これは、考えがまとまったら、ブログに書くつもりでいますが。
政治でさえ企業の独占物になっているのが現代。言論空間でさえ企業のモノ。

7. Re: Amazon以上にグーグルとかのほうがアレ

 lineアンケートはちょっとヒきましたね……。amazonの書店検索履歴なんてのも簡単に思想調査に仕えるでしょう。図書館の貸し出し履歴は警察にも開示できませんし、それは思想信条の自由と密接に結びついているのですが、自らのネット上に本棚を晒すナルシストの多いこと、多いこと。
 現在、世界的にネット上でのセックスが流行しているそうですけれど、これなんてもう、どこで傍受、監視、記録されているかわかったものではない、という話で……。監視カメラ付きのラブホテルに通いたいかなー、と思ったり。

http://wjn782.blog.fc2.com/blog-entry-425.html

 この記事の最後の方でちょろっと触れていますが、そういう流れが加速するのかなーと。

 企業が国を超えようと、国が企業を従えようと、どのみちそういった技術を用いた監視、弾圧は止められないのですけど、どうしたものか。人間ってそこまでたくさん必要ないとみなされて、現状はもうほとんどの人間が「奴隷にする価値さえない」として弾圧対象とされているのだろうし、国家を用いてそれは行われるのだろうな、と思います。どないしたものか。

 精神が肉体を超克するって、昔からスピリチュアルとかポストモダンとかニューエイジとか、ソ連が失敗したとみなされて以降の流れから「反省」として存在していますけど、なんのこっちゃない、精神と身体の二元論から身体を尊び、理性を崇拝し、その先にあるのがサイバーパンクの高度情報化社会で……うまくまとまらないのでこのへんで。
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