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塗説録

愁いを天上に寄せ、憂いを地下に埋めん。

宇部市のマスコットキャラクターであるエコハちゃんがピカチュウの剽窃であるとの噂が流れているが、これは悪質な流言飛語であり、実際にはそこまで似てない。
 山口県宇部市は工業が盛んで人口も多く、経済活動も活発な都市でありながら、ときわ公園という春夏秋冬四季折々の表情を見せる樹木の並ぶ巨大な自然公園を有する、まさに未来都市のイメージそのものである。このときわ公園は、そこに放し飼いされる人工受精で誕生したペリカン『カッタくん』で平成初期に一躍全国的な知名度を得た。現在は国の登録記念物に登録されている。
 ここはエヴァンゲリオンの監督である庵野秀明の出身地でもあり、未来都市・第三新東京市も、少年期を過ごした宇部市がモチーフである。エヴァンゲリオンで特徴的な電柱は、自身が育った宇部市の風景から着想を得たとインタビューなどで幾度となく語られているし、氏の監督した実写映画『式日 SHIKI-JITSU』では、宇部市の風景が演出に用いられている。あと、宇部市内にある沖の山では前漢で用いられた金銭が発掘されており、ここが邪馬台国であったに違いない。
 ただし、沖の山は大日本帝国時代の炭鉱であり、ここで強制労働をさせられていた朝鮮人も数多くいた。植民地の人民の血を啜り"急成長"を遂げた炭鉱を前身とするのが、現在もセメント産業で有名な宇部興産であり、これが工業都市宇部の根幹をなしている。(セメント産業は現在、三菱重工と共同で運営中。三菱も帝国時代の軍需産業である。)常磐公園も、その宇部興産が設立した公園である。宇部市の豊かな産業も豊かな自然も、ただ平和裡に築き上げられたものではなく、すべては搾取の元に誕生したものなのだ。代表取締役社長の発言などを見ても、現在において政権中枢と宇部興産とが癒着している事実は知る人には知るところであろう。

 さて、宇部興産の醜聞と大日本帝国の弾劾はひとまず置いておくとして、『エコハちゃん』とは宇部市の環境マスコットキャラクターである。エコロジーの『エコ』に、葉っぱの『葉』を併せた『エコハ』という名前には、自然植物を大切にしようという想いが込められている。しかし、そのエコハちゃんが、任天堂の人気ゲームシリーズ『ポケットモンスター』に登場する人気キャラクター『ピカチュウ』の剽窃であるとの噂が世間に流れている。
 しかし、これはまったくの誤りである。宇部であれば何でも叩けばいいということはない。エコハちゃんがピカチュウの剽窃であるなどとは、酷い名誉棄損である。エコハちゃんはオリジナルキャラクターであり、ピカチュウの剽窃などしていない。実物を見てほしい。

エコハちゃん

 こちらがエコハちゃんである。赤い真ん丸ほっぺを見るに、確かにピカチュウの影響を受けているかもしれない。しかし、ピカチュウの剽窃と言えるほど似ているだろうか。とてもそうは見えない。剽窃と呼ぶのであれば、せめてアンパンマンと香川県のゆるキャラねんりんまんくらい似てるものを言ってほしいものだ。

 もちろん、エコハちゃんがピカチュウの影響を受けた可能性については否定しない。しかし、人間にとってイチからオリジナルを構築することなど凡そ困難な徒労であり、むしろ模倣こそがクリエイティビティの端緒である。ブラック・ジャックは高額で依頼を請け負う腕利きのプロというゴルゴ13のコンセプトを拝借し、その職業を殺し屋から医者に転換した作品である。この時点で模倣性から生まれたクリエイティビティの存在が証明されたが、ここから更に料理人版ブラック・ジャックともいうべきザ・シェフや漫画家アシスタント版ブラック・ジャックであるコミックマスターJのような派生作品が次々と生まれた。ゴルゴ13とブラック・ジャックはまるで違った作品にみえるけれど、ザ・シェフの主人公味沢匠はビジュアルまでブラック・ジャックによく似ていた。しかし、これを剽窃と断じて潰すべきだったか。そんなことをしていれば、日本の漫画という文化は委縮し、途轍もなく矮小なものになっていたはずである。エコハちゃんとピカチュウの類似性が、ブラック・ジャックと味沢匠の類似性より大きなものとは思われない。
 そもそも、かつての日本の漫画家たちが、どれほど海外のSF小説や映画を模倣した作品を描いてきたか。模倣から日本漫画は始まっている。それなのに、中国や韓国が日本の漫画を模倣した作品を剽窃だと暴き立てることで、ネトウヨたちがどれだけそれを差別に利用してきたか。自分たちは古くは中国や朝鮮、近代には欧州やアメリカから模倣を繰り返しておきながら、今になって日本の漫画を模倣をした中国や韓国の漫画を剽窃だとして中国人や韓国人をパクリ民族などと誹謗中傷したネトウヨどもは、恥知らずもいいところである。
 たとえばヒップホップ文化は、どのように発生したか。地下社会の黒人たちによる既存音楽やダンスのミクスチャーから始まった。しかし、白人たちは、これまで散々黒人音楽を模倣してきたにもかかわらず、それを指して嘲笑し、黒人は独創ができず猿真似しかできないとせせら笑ってきた。世界にあるほとんど文化は異国の文化の模倣から始まったのではないか。過剰な著作権主張によって、どれほどの文化が潰されたか。安易にパクリだパクリだと言うのを控えていただきたい。ましてや、エコハちゃんは見ての通り、ピカチュウの剽窃でもなんでもないことは明らかなのだし。



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 確かにこの着ぐるみはどう見てもピカチュウのパクリにしか見えませんよ。それは確かです。しかしね、エコハちゃん自体はピカチュウのパクリではない。そもそも、パクリで何が悪い? 人は真似をすることによって成長する。"まなぶ"とは"まねぶ"なのだ。安易に剽窃だなんだというのは、本当にやめた方がいい。それは人類の進歩の否定につながる。ブルジョワ的な権益でしかない著作権は廃止するべき。
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コメント

1. No title

パクリは世界文化遺産なのになんでこんなにも日本人はパクリを嫌うんでしょう。
日本なんてパクリしかしてないのに。
パクリの先に文化が芽生えることを認めないといけないでしょうね。
なので、山口県はピカチュウとは言わずに進化後のライチュウ、進化前のピチューもパクりましょう
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