忍者ブログ

塗説録

愁いを天上に寄せ、憂いを地下に埋めん。

イスラムとアンチフェミウヨとリベサヨフェミなんて人口競争においては五十歩百歩でしかなく、出生率は思想や宗教より産業構造や人口密度との関連性が高いのではないか。
よくアンチフェミが出すフェミニズム叩きに「フェミは女性にブルカを着せようとしている。イスラムと同じだ。」というものがある。あるいは、「フェミが支持しているのはやさしい家父長制だ」というものがある。これまでの私の発言を見てくればわかる通り、これらについて私は必ずしも否定はしていないし、そもそもネットでそういうことを言い始めた元祖は私と言ってよいくらいである。まっさきにそういう論調でフェミニストを批判したのは、むしろ私だ。
 で、だからこそ思うんだけど、なんでアンチフェミはフェミニズムを叩いているのかよくわからない。だってさー、フェミニズムがイスラム保守主義や家父長制と同じことを主張しているなら、勝手に支持させておけばええやん。だって結果は同じなんだし、それで保守回帰するんだから。私は左翼だし保守回帰が嫌だから全部を叩いているわけで、なんでアンチフェミウヨがフェミを叩いているの? まあ、女が口を出すこと自体を封じたいということだろうし、それはそれで保守回帰としては筋が通ってはいるけれど。まあ、それはさておいて。


 で、ここから本題。その際に用いられるロジックが「男尊女卑なイスラムは人口が増えてフェミやリベサヨで人口が減る。このままではイスラムの天下だ。だから保守回帰して男尊女卑を復活させ、それによって少子化を防がないといけない」というもの。やたらとアンチフェミがあおっているけど、これが本当に信用ならない。
 その前にまずこの前提が仮に正しいとして、そもそも「イスラムが男尊女卑だからこちらも男尊女卑にしよう」というのがわからない。だって、「だったら潔く自分もイスラム化したらいいんじゃね?」としか思えないじゃん。仮にイスラムが男尊女卑なおかげで多産でほかの国がそうじゃないから少産だったとして、なんで向こうの男尊女卑を真似ないといけないの? 自らの特質を失ってなんのために闘うの? そんなことより、私が仮にアンチフェミウヨなら自分がイスラムになるけど。リベサヨフェミと敵対せず、逆に保護されながら家父長制を敷けるんだから。

 で、本当にイスラムがそこまで人口爆発を起こして世界を席巻するの? なんかすっげー怪しい。

 だってさー、延々イスラムの人口爆発によるリベラル側の危機を煽っているアンチフェミはリベラル圏(という名のキリスト教圏)とイスラム圏の二項対立に落とし込んでるけど、連中は儒教という古豪を無視してるんだもん。「子をつくらねば不孝!」という出産推奨の権化みたいな宗教であり、日本の倫理観を形作った宗教の中でも最大のものの一つだ。なぜこれを無視するのか。儒教圏と呼べる国、あるいは国と同様に自治政府を持つ地域と呼べるのは、日本のほかには、中国、韓国、朝鮮、ベトナム(越南)、シンガポール、台湾、香港であろう。

 で、適当に開いた国別出生率を引用。

https://www.globalnote.jp/post-3758.html
177 カナダ 1.50
178 フィンランド 1.49
179 スロバキア 1.48
180 セルビア 1.46
181 アラブ首長国連邦 1.45
181 セントルシア 1.45
183 モーリシャス 1.44
184 日本 1.43
185 クロアチア 1.42
186 ルクセンブルク 1.41
187 ポーランド 1.39
188 ギリシャ 1.38
189 ウクライナ 1.37
190 マルタ 1.37
191 ポルトガル 1.36
192 スペイン 1.34
192 イタリア 1.34
194 キプロス 1.34
195 ボスニア・ヘルツェゴビナ 1.28
196 モルドバ 1.26
197 マカオ 1.21
198 シンガポール 1.16
199 台湾 1.13
199 香港 1.13
201 プエルトリコ 1.10
202 韓国 1.05


 見てください、儒教圏の出生率、その怒涛の低さ。赤字が儒教圏の国であるが、この中でも特に儒教の影響が強いといわれる韓国は、なんと出生率最下位をマークしてます。で、プエルトリコと香港は少し特殊だとして、儒教の根強い台湾は下から4位。シンガポールも少し特殊か。それにしても、ガッツリ最下位争いをしているのが儒教圏の各国(各地域)である。この中では、むしろ日本はむしろ少子化していないくらい。
 これはなぜか。「儒教が男女平等で子供をつくらせる規範がない宗教だからキリスト教圏より更に出生率が低い」とか?

 んなわけねーだろ。儒教が他の宗教と比べて突出して男尊女卑だとは思わないけど、伝統儒教が男女平等とはまったく思えないし、出産をメチャクチャ推進する宗教である。

 これ、私が思うに、たぶん要因のひとつは人口密度です。というわけで、適当に検索した人口密度ランキング。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E5%AF%86%E5%BA%A6%E9%A0%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88
1 マカオ 672,000 32.9 20,426 [2]
2 1 モナコ 32,812 2.02 16,244 [3]
3 2 シンガポール 4,736,000 699 6,773
4 香港 7,022,000 1,104 6,361
5 ジブラルタル 31,045 6 5,174
6 3 バチカン 784 0.44 1,782 [4]
7 4 マルタ 408,000 316 1,293
8 バミューダ諸島 64,863 54 1,201
9 5 バングラデシュ 162,220,000 143,998 1,127
10 6 バーレーン 791,000 741 1,068
11 7 モルディブ 309,000 298 1,038
12 ガーンジー 61,811 78 792 [5]
13 ジャージー 90,800 116 783 [6]
14 パレスチナ 4,277,000 6,020 711
15 台湾 23,049,000 36,188 637 [7]
16 8 モーリシャス 1,288,000 2,040 631
17 9 バルバドス 255,000 430 595
18 アルバ 106,000 180 592
19 マヨット 194,000 374 519 [8]
20 10 サンマリノ 31,358 61 514
21 11 ナウル 10,210 21 486
22 12 韓国 48,332,000 99,678 485
23 プエルトリコ 3,981,000 8,870 449
24 13 レバノン 4,223,000 10,400 406


 このランキングだとモナコやバチカンが上位に入ったりしてピンとのないので、人口1000万人以上を抽出して上位3つを抽出すると、

5 バングラデシュ
7 台湾
12 韓国


 ね? いい勘してるっしょ、私。というわけで、人口密度が高くて発展した国だから台湾や韓国は出生率が高いのだと予測できる。抜き出しからは外したが、ほかの人口過密の都市国家なども低出生率国と顔ぶれが被っており、同様の理由から出生率が低い蓋然性も高いと思われる。東京の狭い家でたくさん子供なんてつくれないのと一緒よねー。え、違う?
 とにかく、これは儒教の思想によって意識が違うとか、そういう話ではない。たぶん、出生率と宗教思想、そこまで関係ない(無関係とは言わないが)。少なくとも、決定的な要因ではないだろう。これは国家の発展と産業構造が主で、それに基づいた人口の問題ではないか。出生率と人口が関係あるだなんて当たり前の話で、台湾と韓国は最近まで発展途上国(地域)の独裁政権下だったし、外国の工場があって安い製品を国外に供給していた国だから、そりゃ元の人口は多い。

 というわけで、「儒教」と「人口密度」という新たな基準が登場することで、なーんか「イスラムの人口爆発ガー、フェミリベラルの少子化ガー、西欧ガー」という話が怪しい話だと分かってくる。

 で、人口密度ランキング上位のバングラデッシュは今回問題のイスラム教国家。韓国や台湾と違い、発展途上国に分類される。1990年まで、中学校の就学率が20%だった国。なので、社会状況が違うため、人口密度は高くても台湾や韓国と比べると出生率が高いのもわかる。
 さて、それでは現在のバングラデッシュの出生率はどうか。アンチフェミの皆さんイチオシのイスラム教国だから、当然ながら高い出生率が……。

111 米領ヴァージン諸島 2.08
112 ジョージア(グルジア) 2.06
112 バングラデシュ 2.06
114 エルサルバドル 2.06
115 ベトナム 2.04
116 コソボ 2.02


 出生率、なんと2.06!

 ……この通り、実はいうほど高くない。人口維持に必要な合計特殊出生率は2.07と言われており、それを下回っているのである。じゃあ、もうこのままだと少子化じゃん。ちなみに、これは2017年のデータで、2019年の出生率はなんと2.0ちょうど。
 実はバングラデッシュ、21世紀から就学率が激増しており、2017年時点で中学校就学率は70%を超えている。1990年までは4を超えていた出生率も、今やこのありさまである。来年には2を割るんじゃないだろうか。
 要は国の発展に伴って、あっさりバングラデッシュの出生率は落ち込んだ。それにしても、中学進学率が90%にも達さない程度の発展で、既に出生率はここまで落ち込むのであるから驚きである。ちなみに、バングラデッシュは痴漢を告発した女学生が逆に不貞だとして殺されるような国であり、男尊女卑はまったく克服されていない。それでもこの調子である。


 で、アンチフェミを見ていて思うんだけど、人口増加のために出生するなら夫婦の出生数は2人じゃ足りないんですよ。3人で当たり前。独身者は当然発生するんだし。「お国のために子を産めー。人口を増やせー」なんて言うなら、3人でも自慢なんかできない。子供は4人くらいが標準くらいじゃないとだめです。そんなのアンチフェミの皆さん、本当にやる気ある? 現状の社会構造から思想だのをちょっといじくったくらいで達成できると思うの? 正気?
 いやね、思想や宗教を過大評価しすぎなんですよ、皆さん。だってさー、東京で既婚家庭のほとんどが4人子供がいる状態とか想像できる? 物理的に不可能とまではいわないまでも、環境的にめちゃくちゃ困難だよね? これを根性でなんとかする気? インセルだのの主張を飲んだり、男尊女卑復活とやらをして、これが解決すると思うの? アンチフェミの皆さん、それ本気で言ってる?
 この状況を打破するには、農村から都市を包囲して革命を起こすくらいしかないよ。私は本気でそれやりたいけど、ネットのアンチフェミの皆様方はそれすんの? ネットでリベラルだのフェミだの叩いても、そんな大変動は起こらないよ。それと、私は左翼なので、革命は起こしても男尊女卑政策なんて敷く気ない。そもそも、都市のインテリやブルジョワなんかを農村に下放すれば解決する問題だしね。
 イスラムの出生率を絡めたフェミvsアンチフェミって、フェイクであり対立煽りの商売でありガス抜きだよ。プレジデントがやたらとテラケイの記事載せてるの見ても、なーんか、フェミとアンチフェミを闘技場で闘わせて見世物にして金を稼ごうって動きをいろんな場に感じるんだよな……。これ、どっちが勝つとかじゃないと思う。すっげーきな臭い。イスラムの出生率の話、カズ藤澤も推しているんだよな。くだらない。「男尊女卑のイスラムは多産で繁栄している!」とかアジってるけど、仮に百歩譲って今後イスラムが人口闘争によって西欧圏などに勝利したとしても、それは相対的に減少が遅かったがための勝利であって、「繁栄」と呼べる質のものにはならないだろう。全体が地盤沈下しているだけである。

 ISIS以上のイスラム原理主義国家であるサウジアラビアも今や出生率は2.53。近年、イスラム教の教義解釈によって、これまで禁止されてきた女性による自動車の運転が解禁されて話題になったけど、これもそういう時代の反映じゃないのかね? 社会構造の変化とともにイスラムの男尊女卑とやらも克服されていくんと違うの? はっきり言って、サウジアラビアでさえ、現状は人口は維持できても、維持できる"だけ"の出生率。しかも、そのうち少子化が進んでゆくのは明白である。イランに至ってはとっくに出生率1.6。西欧先進国と何も変わらない数値である。イランは決して伝統宗教における男尊女卑意識が小さい国ではない。仮にイスラム圏の男尊女卑が克服されなかったとしても、少子化は止まらないと思われる。痴漢を告発した女性が不貞の罪で殺されるような男尊女卑の国でも、出生率はとてつもない勢いで低下しているのだ。
 遅れて近代化した儒教圏が、現在は西欧以上に少子化しているように、イスラム圏にも同じ運命が訪れる可能性は高い。これまで多産だったのに、急速に少子化したら一気に少子高齢化が進むだろう。儒教圏もこのケースだよ。宗教、やっぱりあまり関係ない。

 ところで、このままイスラム圏で少子化が進みながら経済発展したら、そこから西欧に移民する人なんていなくなるんじゃない? 「日本に移民をしたい中国人はいない」なんて最近は言われているけど、西欧とイスラム圏もそういう関係になるかもね。
 そうやって考えると、リベサヨフェミの大本営発表も、ネトウヨアンチフェミのネットdeプラウダも、どちらも怪しすぎる。いつまでもイスラムをマイノリティだと考えているリベサヨフェミと、いつまでもイスラムの社会構造と意識が変化しないと考えているネトウヨアンチフェミは表裏一体の誤りを犯しているのではないかと私は考える。
 いずれイスラム圏の国家が人口減少で移民推進をし始めて、「我が国バングラデシュはアフリカからの移民と難民をこれだけ受け入れたのに、イタリアはこれだけしか受け入れていない。もはや西欧国家は先進国を名乗るのをやめるべきだ。」なーんて話をする日が来るかもね……。イラン人が「イタリア? いい国だよ。よく旅行に行っている。古い文化遺産がたくさんあるし、なにより物価が安い。」と言い出したり。これから数十年単位で人口増加が維持できる地域、アフリカだけだと思うよ。東南アジアも怪しい。

 第三次産業が発展し、都市集中が進めば、出生率は下がって当たり前なんだよ。人の数がそのまま力になり、成果物でそのまま衣食住が充実する第一次産業や第二次産業と違って、第三次産業は人が増えれば豊かになるような性質のものじゃないから。こうした社会構造では、産めよ増やせよが豊かさに直結しない。これは宗教や思想と関係ないし、なんならそういった社会的背景に基づいて思想や宗教が出来上がると考えたほうが合点がいくだろう。マルクス主義の有名なテーゼ、「下部構造が上部構造を規定する」というやつだ。
 フェミニズムについて、よく「近代の産業構造や社会の発展によって隙間に存在するだけの思想であり、主張には何の実効性も意味もない」と嘲笑されることがあるけど、これはアンチフェミがそうなんじゃないの? そもそも、産業構造や社会の発展の隙間に存在するものでない社会思想がどれだけあるのか知らないけど。

 日本で少子化対策といっても、あくまで大幅な人口減少による損害を防ぐために行われるソフトランディングの手段にしかなり得ないだろう。現在、我々の世代に少子化の受難があるのは、いわば氷河期などの気候変動の時期に生まれた受難と似たようなものだと思うしかないと思う。必然的に訪れる災難だよね、これ。私自身も、そういった程度の覚悟はしているし、なんとか減っていく人口でうまく操縦するすべを模索するしかないんじゃないの。資源は有限なんだし、人口が増えても困る。
 ちなみに、そんなに遠くない未来、私は地球の総人口は年間で減少に転じる日が来ると予想している。国連は2100年に地球の総人口は109憶人に達すると予測を立てているけど、そうはならないだろう。私はそれを必ずしも悪いことだとは思わない。人間は情報ではなく物質的存在なのだから、存在するスペースも維持するエネルギーもないなら、人口ピラミッドなるものなんぞ維持してもしょうがないし、そもそも維持できない。

 これはずっと言ってますが、私は日本は既に人口過多だと思いますので、3000万人まで人を減らすべきだと思います。だから少子化対策なんてしなくていいでしょう。人口密度が落ちたら、この国も暮らしやすくなるんじゃないかな。というわけで、日本に住んでる皆様方のうち、やる気のある人たちは勝手に一億総活躍して勝手に一億総火の玉になって勝手に一億総玉砕してほしい。私は引きこもっているから。ほんと、「ありがとー」と「がんばってー」だけで生きていきたいよ、私は。


※追記(2021年5月16日)

 テラケイの「少子化を解消するために男尊女卑を復活するしかない」という内容の記事に実業家の田端信太郎が同意したことで議論が再燃していると聞き、それについてnoteで話していました。そちらを追記として掲載します。

https://note.com/japan74524736/n/ndc851af27e58
https://note.com/japan74524736/n/n39f94ed30685
https://note.com/japan74524736/n/ne2663421bdc7
https://note.com/japan74524736/n/n687e13652c32
https://note.com/japan74524736/n/n2a0d504f7e04
https://note.com/japan74524736/n/n1e72e29c666f

 過去にTwitterに掲載した私の調査では、日本の都道府県別データにおいて、出生率と進学率は相関性あるけど、男女の進学率の差と出生率には相関がまったく見られなかった。よって、これは社会全般の高学歴化を抑制することは出生率の向上に役立つ可能性は読み取れるが、女性の教育を制限して男女の学歴に差別を設けることが特段の出生率の向上につながるという話にはならない。もちろん、単純に学歴自体が抑制されれば少子化に効果があるのだから女性だけの学歴を抑制してもある程度出生率が上がる可能性はあるが、それだと女性に限定する理由が不明である。たぶん大学全廃とかの方がいくらか効果あるし、それなら男女平等なので私も場合によっては支持するけど。

 ちなみに、女性教育の工場と出生率低下の関係については、エマニュエル・トッドが過去に論じていたのだけど、それは「女性の識字率が高まると少子化が進む」というもので、中等教育程度のことは論じられていない。
 これにならえば、識字率を5割以下にするような圧倒的な教育の制限すれば、男女の差別を設けることによる出生率の向上に莫大な効果があるかもしれないが、男尊女卑で少子化解消と主張する連中が娘にスマホも持たせないような世の中を本気で志向しているのか、まったくもって疑問である。

 また、アンチフェミは「女性の社会進出を禁止すれば少子化解決」と主張しているが、日本における女性の就業率と出生率の関係については、出生率が高い地域ほど女性の就業率が高いデータがある。これは相関関係から類推するに地域の保革の政治風土などの問題ではなく、むしろ貧困地域であるか否かとに強い相関が見られ、単純に現在の日本において共働きで生活を維持する貧困層の多産傾向による結果であると考えられる。
 よって、フェミニストが主張するような「男女同権による女性の社会進出で少子化解消」とは思われないが、アンチフェミの「女性に社会進出をさせなければ、少子化が解消される」という話にはまったく結びつかない。フェミニストの見解に誤謬が含まれることは、アンチフェミの正しさを同定しない。
 前近代について言えば、そもそも江戸時代において専業主婦的な家族形態自体が中流以上の武士階級等のものであり、庶民や下級の武士は概ね男女ともに就労をしていた(夫婦のみによる家族形成自体が少ないが)。これは生活のためである。
 一応、江戸時代には飢饉等で一定の時期に経済的に困窮した貧困者の婚姻率が下がったり、出産を控えたり間引きが増えることはあったため、「男女が就労する貧困層が少子化し、女性が就労しない率の高い中上流階級が安定した出生率を保つ」という事態が起こった時期があると考察されるデータは存在するが、これは経済的困窮度の問題であって、男女就労率の問題であると考えるのは強引であろう。
 だって、「飢饉に陥って婚姻や出産を控えたり間引きをしていた江戸時代の貧困農民が女性に仕事をさせなければ、裕福で生活が安定していた上流の武士や商人のように子供を育てることができたはずなのに!」なんて主張は無理くない? アホくさ。

 ところで、こういったデータから見れば、上述の現代日本における貧困率と出生率の相関性を見て、単純に今から貧困化を推し進めれば婚姻や出産が増えるかといえば、それにも疑問が残る。
 これらについては少し複雑な考察が必要になるため、ここで筆を置くが、婚姻や出産は貧困や景気変動、産業構造や就労環境等と関係する部分が大きく、男女の就労率に依存するような考察をする余地があまりないように思えた。江戸時代の貧困層の皆さん、データ見ててもそんなことを言ってられる余裕なさそう。

 もともと、この記事は上記のようなデータを参照して、近代日本の出生率のことや、在日外国人による実体験の話等を交えて移民と出生率の変化を論じる続編が予定されていたのだけど、思った以上に調査や作文が手間だったので原稿を放置し、更には記事を書き上げる前にブログを休止したので、公開されていない。来年ブログは復活する予定なので、機会があれば続きを書くと思う。


 それにしても、田端といい、カズ藤澤といい、あのへんのうさんくさいネオリベ事業家ってホントこういう話好きだなー、と思う。あのへんのアンチフェミにネオリベ打倒の期待なんぞしたらあかんて。


※追記(2021年5月17日)
2100年の世界人口、88億人に 国連予測から21億人減

https://www.afpbb.com/articles/-/3293884
 まーた私の予言が当たったよ。敗北を知りたい。実際、もう少子化はどうしようもないでしょ。前にれいわ新撰組が維新の少子化前提の政策を批判していたけど、その方向性じゃうまくいかんよ。その意気は買いたいところだけど。

PR

コメント

1. No title

アンチフェミネトウヨは、女性の人権が軽視されつつポルノは自由に見れる社会を望んでいる人が多そうに思います。
そういう人達がイスラム教とフェミニズムを両方とも支持しないのは自然だと思います。

2. 無題

産業構造や人口密度が思想や宗教ではないとのエビデンスはあるのか?

3. Re: No title

> さん

 アンチフェミにもいろいろいますから、そのあたりに齟齬がありそうな気もしますが、まあそういうタイプもいるかな、と思います。ただ、結構いるんですよ。「男尊女卑が実現するならポルノは規制されていい」ってタイプ。

>?さん

 産業構造や人口密度に思想が関係あったとして(たぶんある)、アンチフェミの主張とは異なり、イスラム圏が「産めよ増やせよ」であったり男尊女卑であっても人口が減りつつあるのは明らかであり、そこは本題ではないです。論理として引っ掛かりを覚えるのはわからんでもないですが。
コメントを書く