忍者ブログ

塗説録

愁いを天上に寄せ、憂いを地下に埋めん。

「ここから逃げ出したい? ギルドで仲間を集めろよ。」
 そもそも、主人公の目的は楽園に到達することではない。なぜなら、最初の街で一番初めに会話をする村人のセリフは、次のようなものである。

「ここから逃げ出したい? ギルドで仲間を集めろよ。」

 主人公は自らの目的を「ここから逃げ出すこと」として述べたのではないだろうか。
 塔の途中にある天国と地獄は、まさに先の楽園の存在を予兆させるものである。ここでの天国は極めてグロテスクで、地獄の存在から目を逸らし、安楽を貪る世界。
 逆に地獄は守人の鬼たちを退治すれば、たちまち自由な世界となる。結局、地獄であるか、天国であるかは問題ではない。ここで暗示される主人公たちの目的は自己の解放である。
 だからこそ、塔の最上階で神を殺したのち、主人公たちは元の街に帰る。彼らを支配していた存在は失われ、自由を得たからである。地獄を地獄のまま楽園でのうのうと暮らすことは、主人公たちにとって耐えがたいものであっただろう。

「お前のためにここまできたんじゃねえ! よくも俺たちを、みんなをおもちゃにしてくれたな!」
「それがどうかしましたか? すべては私がつくったモノなのです。」
「俺たちはモノじゃない!」
「神にケンカを売るとは、どこまでも楽しい人たちだ。これも生き物のサガか。」

 そもそも、主人公のセリフからしてわかる通り、彼らは楽園で安穏としていられるタイプではない。主人公の怒りの対象は絶対者の支配である。
 容量の問題であろうとなんであろうと、この世界のキャラクターは男も女もない、ジェンダーフリーで自由に疼いている人々である。主人公たちの目的は楽園に到達することではなく、閉塞した、壁に阻まれた世界からの脱出であり、自由の獲得である。
 魔界塔士SaGaは自らを縛る鎖を断ち切り自由を獲得する物語であり、それは後のシリーズにおいての作風にも継承されている。

魔界塔士Sa・Ga
PR

コメント

コメントを書く